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ミニゲーム

「それじゃ、始める前にもう一回、ルールの確認をしますね」
ヘッドギアした青年は前に立つ活発そうな少女の言葉に頷いた。
「まず制限時間は三分、三ラウンド。お兄さんがその間にボクにパンチを当て
られたらそこでゲームは終了。パンチを打つときは必ず1発ずつ。外したらボ
クは反撃をします。お兄さんが空振りする度にボクの反撃の数は増えていきま
すから注意してくださいね。それから、ボクにパンチをガードさせた時はそれ
までの空振りの回数はリセットしますね」
青年は少女のルール説明に更に頷き返す。
「そうそう、ボクからの反撃はガードしても良いですし避けても良いです。勿
論、ボクの反撃中に手を出してもOKですよ。良い練習になりますし」
そう言うと少女は微笑んだ。ボーイッシュな雰囲気が一転し年頃相応の少女の
可愛さが前面に出る。青年はその表情にどきりとしたがそれを隠しつつ、また
頷いた。
「あとは、ルール違反した時は痛いですよ~。それだけは注意してくださいね。
それじゃ、始めますよ」
少女はそう言うとグローブを着けた拳を構える。そして、青年も同じように構
えを取った。
「えへへっ!ボクは強いですよ~。油断しないでくださいね~」

青年はゲーム開始と同時に一気に間合いを詰めるとジャブを放った。その一撃
は鋭く良くスピードが乗ってると言える。しかし、少女の読みと反応速度はそ
れを上回った。少女の反撃の鋭いジャブが青年の頬を捉え、僅かに脳を揺さぶ
る。
青年はその攻撃に怯まずストレートを放つ。だが、少女はそれを身体を捻りな
がらダッキングしてかいくぐるとボディアッパーで青年の鳩尾を突き上げ、逆
の拳を顎へ突き上げた。
何とか、青年は少女のアッパーを身体を反らせてやり過ごすと負けじとアッパ
ーを繰り出す。それに対し少女はバックステップで一端、距離を置きステップ
インをしながらストレート、ボディフック、フックのトリプルを青年に叩き込
む。
青年はその三連打の耐えると渾身のフックを放った。少女はそれを身体を沈ま
せて避けるとフック、アッパーと青年の腹部を攻め立てる。青年はその攻撃に
耐えきれず顎を下げた。そこへ少女のアッパーが襲いかかり身体が完全に伸び
たところを強烈なフックが青年の頬を捉える。その攻撃の前に青年はダウンを
喫した。

何が起きたのか判らないと言った表情で青年は起き上がる。そこで少女が心配
した表情で自分を見下ろしていることに気付いた。
「大丈夫ですか?制限時間はまだ残ってますけど…あまり無理をしないで下さ
いよ」
そう言う少女に対し青年は大丈夫、まだやれると言った表情で立ち上がりファ
イティングポーズとる。
「それじゃ、ゲーム再開ですね。でも、危なかったらちゃんと降参してくださ
いよ」
青年はその言葉を心の片隅に置くと再び拳を振るい始める。
その後も、青年の拳は少女にガードすらさせる事も無かった。左右へのフット
ワーク、フェイント、少女の反撃の隙を狙った攻撃を駆使するも、それを読み
切った少女の反撃が青年を打ちのめす。遂に少女の反撃は一つのコンビネーシ
ョンだけでは追いつかなくなり複数のコンビネーションを駆使するようになっ
ていた。それでも青年は必死に立ち拳を振るう。だが、青年は満身創痍になり
ながらも何故、自分がこのゲームを続けるのか理解していなかった。

そして、最終ラウンド。青年は無意識にルールを破り三連のコンビネーション
を開始と同時に少女へ向けて放った。しかし、それには全く力が無く、あっさ
りと少女にかわされてしまう。
「あ~あ。ルールを破っちゃいましたね。打たれても前に出ようとする姿勢は
凄く良かったんでけど。罰として今までお兄さんが空振りしたパンチの数に今
の三をかけた回数をボクは反撃します。お兄さんの気持ちに応えて全力で行き
ますよ。覚悟してください」
少女はそう宣言すると青年の懐に飛び込みパンチを放つ。顔、ボディを問わず
青年の上半身に少女の拳が降り注ぐ。青年は少女の拳の嵐をひたすらガードし
て耐え抜き最後の機会が到来することを待とうとした。だが、少女の拳はガー
ドの穴を的確に突いていく。

「こんなになってるのに最後までゲームを続けようとする人はお兄さんが初め
てですよ。心配なんて失礼な事をしちゃったかな。次のパンチはボクなりのお
詫びです。行きますよ!」
このゲームの残り時間が僅かになったところで少女はそう言うと渾身の右スト
レートを打ち出した。幼い頃から鍛え上げた身体能力と空手の経験、更にボク
シングで学んだ技術の全てを注ぎ込んだその拳は青年の左頬を捉える。
その強烈な一撃はヘッドギア越しですら青年の意識を奪うに十分なものだった。
意識を取り戻した青年は痛みに耐えながら上半身を起こす。そこへ少女が声を
かけてきた。
「今日はありがとうございました。お兄さんのお陰で久しぶりに思いっきり身
体を動かすことが出来ました。今度はもっと強くなってから挑戦してください
ね。ボクももっと強くなって待ってますから!」
少女はそう言って深々と頭を下げてから満面の笑みを浮かべた。
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