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ドリーム・ファイト・クラブ

「ラブ・アッパー!」
 朦朧とする意識の中、俺は対戦相手の叫び声を聞いた。
 俺の顎から頭頂部へと衝撃が駆け抜ける。そして、それに続く浮遊感。
 ぼやけた視界には今までかいた汗が飛び散り照明に反射する様子が飛び込んでくる。俺
の目には煌めき飛び散る汗が不思議と幻想的なものに感じた。
 ここはドリーム・ファイト・クラブ。ファイト・ガールと呼ばれる美人格闘家達と戯れ
る夢と幻想の舞台。
 いや、戯れると言う表現はここに来た者以外には理解できないだろう。
 メイド衣装をアレンジしたコスチュームに身を包んだファイト・ガール達は皆、一様に
強い。それはプロである俺達が惚れ込むほど。そして、どんなに真剣になっても勝てない
ほどに。
 俺達はここへ彼女達の闘う、美しい姿を目に焼き付け敗北を味わいに来る。それが、戯
れると言う意味だ。
 俺が今日、指名したのは双葉理保。グラビア・アイドルでありながらファイト・ガール
としてドリーム・ファイト・クラブに勤めている。
 ボクシングもののドラマへ出演オファーがあり、役作りの一環として事務所には内緒で
理保はここで働いていると言っていた。しかし、理保のトレーニングの成果は役作りの域
では留まっていない。
 世界チャンピオンである俺が、いともあっさり追い詰められ何度もKOされている位だ。
 浮遊感が途切れ、落下感を感じ始める。俺の脳裏に今日の理保の姿が次々と浮かんでは
消えた。
 ローヒールとは言えローファーパンプスで俺の進路と退路を断つフットワーク、俺の出
鼻をくじくと同時に試合の流れをコントロールする鋭いジャブ。
 ボディブローは鍛え上げた腹筋を掻き分け内臓を押しつぶし、顔面へのパンチを喰らう
度に俺の頭は首振り人形のように揺さぶられる。
 何より、目を見張るのはそれらを組み合わせた完璧なコンビネーションだ。上下左右に
意識を散らすのは勿論、同じ部位にパンチを当てダメージを蓄積させていく。
 俺はそんな理保のパンチに耐えながら反撃を繰り返したが彼女はディフェンスでも卓越
したテクニックを発揮した。
 フットワークに加え、ウェービング、パーリングと言ったディフェンス・テクニックを
駆使し理保は俺のパンチを全てかわしていく。勿論、距離とタイミングが合えばカウンタ
ーを合わせてくることも忘れない。しかも、状況に合わせてジャブ、フック、ストレート、
アッパー全てのパンチを見事に使い分けていた。
 そして、俺はマットに叩き付けられる。
 理保がカウントを取る声が聞こえ始めた。それは試合で聞くよりも間違いなく長めに間
を取りカウントをしている。
 しかし、俺はその全てを聞き終える前に意識を手放した。

 気が付くと俺はVIPルームの天上に吊されているシャンデリアを見上げていた。
 傍らではグローブを外した理保が俺の頬をアイシングをしていた。ファイト・ガール達
は試合だけではなく、こうした試合後のケアもしっかりとしてくれる。
 そして、負けた俺達はファイト・ガールから試合の総評やアドバイスに耳を傾けたり、
雑談に耽る。美しく強いファイト・ガールを見上げながら過ごすその時間は至福の時でも
あった。
 俺は理保を見上げ話をしながら、ふと一つの疑問が浮かび上がってきた。
 俺は彼女の強さに惚れただけなのだろうか?と。こうして、ファイト・ガール達を見上
げ至福の時に浸れる。それは彼女達に負ける事そのものが快楽になってきているのではな
いかと…

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