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金網デスマッチ

 俯せにされ背中を反り返されながら俺はロープへの距離を計る。何とか逃れようと腕の
力で体を持ち上げようとするが消耗しきった俺にはその力は残されていなかった。
 思い返せば試合開始から見せ場を持てないままの展開だった。
 序盤は相手の技をその身で受け止め反撃、そうやってプロレスらしいプロレスを客に魅
せようとしていたが予想以上に重い蹴りでジリジリと追い込まれていく。
 見た目に反して格闘色の強いファイトスタイルに戸惑ううちにハイキックでなぎ倒され
俺はしょっぱいと言われようと勝ちに行くことにした。
 しかし、力押しをすようとすれば逆に相手の技に引きこまれて行く。
 何とか持ち込みかけた技はパワーボムとバックドロップ。だが前者はフランケン・シュ
タイナーで返され、後者は体の向きを変えられ逆にボディプレスで潰されてしまった。
 俺が膝を付いている間に相手がパフォーマンスしているところへラリアットで奇襲もし
たが、女は俺の腕で逆上がりをしてからDDTと相手のパフォーマンスの手助けをしただ
けという体たらく。
 そして、気がつけばリング中央でスコーピオン・デス・ロックを掛けられ、技を返す余
裕もロープへにじり寄る体力も奪われていた。
 俺の足首、膝、腰が悲鳴を上げる一方で横隔膜と気道もその働きを制限され呼吸が苦し
くなる。
 この試合はデスマッチということでギブアップもロープブレイクも許されない。しかし、
俺がロープへ向かうことで相手にまだ俺は体力が残っているというアピールは可能だ。
 そうすれば、相手は技を解き、次の手を考えるだろう。その時、僅かでも逆転の機会が
あるかもしれない。
 だが、現実は俺にその力は残されていない。
 単純に落とそうというのであればもっと相応しい技はいくらでもあるが、この女は敢え
てそうせず、苦しみを長引かせる技を使ってきた。
 ヒールという立場を最大限に利用した責め苦だというのは間違いない。そして、俺の技
を尽く潰し一方的に攻め立てる展開もヒールはベビーフェイスを徹底的に痛めつける者と
言うイメージを利用した手管だったことは確かだ。
 パワーという点では間違いなく俺が優っていた。しかし、テクニックとスピード、何よ
りレスラーとして実力、つまり自分のイメージを最大限に利用し試合を組み立て勝つと言
う点ではこの女のほうがはるかに勝っていたのだ。
 薄れ行く意識の中、そこまで思い至ったところで俺はなにも考えられなくなった。
 その後、俺が目を覚ましたのはカクテル色のライトが彩るリング上ではなく控え室だっ
た。
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