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覚醒(後編)

二人はファイティングポーズを取ると暫く睨み合った。男の突き刺すような視線を
キャンディは平然と受け止める。男はその様子に底知れぬ不安を覚えた。そして、
その不安を振り払うかの様に男は先に動き始める。先ずは牽制のジャブやローキッ
クを放ち男はキャンディの動きを封じようとした。
一方、キャンディは男の打撃の間合いギリギリから様子を窺っていた。時折、男の
踏み込みに対しキャンディは出鼻を挫く鋭いストレートやローキックを放つ。それ
らは致命傷にはならないものの着実に男へダメージを与えていった。
次第に激しさを増す攻防。しかし、男の攻撃はキャンディを捕える事はなかった。
いつしか、男とキャンディの攻守が逆転していた。男の動きを封じ、そこから致命
的なダメージを与える攻撃を狙うキャンディ。対する男はカウンターを狙い始めた。
ガードを固めキャンディの攻撃の隙を窺う。そして、二人の拳が交錯した。キャン
ディの拳は男の頬をしっかりと捕え男の拳はキャンディの頬を掠めた。
二人は互いの次の手を警戒し、間合いを取った。男はキャンディの一撃により折れ
た歯を吐き出す。一方、キャンディは自分の頬を触り男の鋭い拳により割けた皮膚
から血が流れている感触を確認した。その瞬間、キャンディの鼓動が高まり潜んで
いた悪魔が解き放たれる。それは孤児院を救う為に闘う事を誓った優しい少女は命
を弄ぶ堕天使へと生まれ変わった瞬間だった。

男はキャンディの只ならぬ変化を感じ取った。しかし、それに怯むことなく右の拳
を繰り出した。キャンディはその拳をかわしつつ男の手首を取った。そして、その
まま男を押さえ込むと脇固めに持ち込んだ。更に何の躊躇いも見せずに肘と肩を破
壊した。
男はその苦痛に耐えきれず絶叫を迸らせる。キャンディはそんな男の髪を左手で掴
んで強引に引き起こすと、腹部と顔面を交互に拳で打ち付け、その感触と音を愉し
み始めた。
次第に激しさを増すキャンディの連打。男は抵抗を試みるが左手一本ではどうにも
ならなかった。遂に男の顔、左半分が腫上がり抵抗を試みる男の腕の動きが弱々し
くなってきた。
キャンディはここぞとばかりに鳩尾を拳で突き上げ、次いで顔面に弓を引き絞るか
の如く振りかぶった拳を叩き込んだ。男は吹き飛び、俯せに硬い床へと叩付けられ
た。
男は弱々しく、まだ辛うじて動く左腕と足を必死に動かしキャンディから少しでも
離れようとする。男は自分の飢えを癒すどころかキャンディの容赦のなさに恐怖し
ていた。
キャンディは男に無造作に近付くと男の脇腹をサッカーボールの様に蹴り、その身
体を仰向けにし馬乗りになった。そして、キャンディは男の顔面に拳を振り下ろす。
再び襲いかかるキャンディの拳に対し男は辛うじて動ける範囲で身を捩らせ、左腕
で顔を庇おうとした。しかし、その行為は意味をなさなかった。
次々と振り下ろされるキャンディの拳は男の残る顔の右半分も腫上がらせた。そし
て、裂傷と潰れ掛けた鼻から流れる血は男の顔と床を朱に染め上げる。キャンディ
は自分の拳が男の顔を歪める様を愉しんでいた。

遂に男の最期が訪れた。最強の名を欲しいままにした男が十代の少女に、なす術無
く打ちのめされる姿を皆が呆然と見守る中、キャンディは男に止めを刺すべく再び
弓を引き絞るがの如く振りかぶった拳を叩き込んだ。
その一撃は男の鼻を完全に潰した挙句、拳大のクレーターを作り上げた。男の身体
は痙攣し生命の危機を必死に訴えた。しかし、その訴えは力ない物となっていった。
キャンディは男が二度と立ち上がらない事を確信するとマウントポジションを解い
た。
レフェリーは血溜りに倒れる男と返り血を浴びて艶かしい表情を浮かべるキャンディ
に恐怖に身を震わせながら、勝者の拳を掲げた。
キャンディは掲げられて無い拳のグローブに付いた男の血を嘗める。それは男の恐
怖と絶望をブレンドしたこの世に二つと無い美酒だった。

この闘いでキャンディは孤児院を救った。だが、それと同時に必死に抑え込んでい
悪魔を解き放ってしまった。キャンディは再びそれを抑え込もうとせず、もう一人
の自分として受け入れた。
何時の頃からかストリートギャングや脅迫犯が息も絶え絶えの無惨な姿で発見され
る事件が多発した。そして、死を呼ぶ堕天使と言う都市伝説が生まれた。
その存在は恐怖と畏敬の念を以て人々に受け入れられつつある。その影には一人の
少女の姿があった。
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