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BOXER M@STER(前編)

少女がボクシングを始めた理由。それは父親からの押しつけだった。
父親は少女の事を男の子を扱う様に育てていた。少女は幼い頃には余り、気に
もしていなかったがこの数年は、もっと女の子らしく扱って欲しいと思ってい
る。
少女の中性的な外見は男女、どちらから見ても魅力的なものだった。だが、幼
い頃からの父親の扱いのせいで立ち振る舞いに少年っぽさが目立った。
そのせいで、少女は女の子からの注目を何時も集めていた。この上、ボクシン
グまでやっていると知られたらそれに拍車がかかる事は間違いない。
かつて同じ理由で始め黒帯を取るまでは、と続けた実戦空手でもそうだった。
少女はそんな現実を打ち破りたかった。その為には父親にボクシングを学んだ
証を見せ付け、自分が自由に振る舞える様に約束させるしかない。

どんな理由であれ始めた事を半端で終わらせられない性格もあり、少女は懸命
にボクシングを学んだ。
そんな、少女の決意と努力に才能は時を経たずに応えた。毛色が違うとは言え
同じ打撃系の空手の経験もあっただろう。少女は水を吸収する砂が如くボクシ
ングを自分のものにしていった。
そんな少女の才能と努力に一人の青年が魅せられた。その青年はプロデビュー
したばかりのボクサーだった。
青年は時間が許す限り少女のスパーリングパートナーを努めた。トレーナーと
のやり取りでは学ぶ事の出来ないものを少女に伝えるために。
そして、少女はその才能を更に開花させた。ジムの誰もがプロになれると認め
る程に。
少女は皆の評価通りにプロのライセンスを取得した。念願のライセンス証を少
女はボクシングを押しつけた父親に見せ付け、行動の自由を約束させた。そん
な少女に対して父親は少し残念そうに「お前の試合も見たかった」と言った。
その言葉は少女の胸に引っかかった。空手の方では様々な大会で優勝を果たし
ている。しかし、ボクシングではそれが無かった。
せめて、一度でも試合をしておきたい。ライセンスを取っただけではなく誰か
にボクサーとして認めて貰いたい。少女の胸にそんな思いがこみ上げてきた。
だが、正式にプロ化したとは言え女子ボクシングの選手層はまだまだ薄い。そ
う簡単に試合が出来るとは思えなかった。それでも少女は居ても立ってもられ
なくなりジムへと足を向けた。

準備体操や縄跳びを済ませた少女は鏡に向かいシャドーを始めるところだった。
そこへ、トレーナーと青年がやってくる。それは青年が少女をスパーリングの
相手に指名する時の組み合わせだった。
「すまないが何時もの様に頼む…と言いたいところだが今回は少しばかり特別
な話だ。コイツが試合を控えていたのは知っているだろう?」
そのトレーナーの言葉に返事をする少女。事実、青年の次の対戦相手のファイ
トスタイルと少女のファイトスタイルが良く似てるとの理由で、二人は熱の入っ
たスパーリングを何度かしていた。
「そいつが怪我をしてな…せめて代わりの相手をと思ってあちこち連絡してみ
たんだが、何せ急な話でな…結局、中止になった」
そこまで言うとトレーナーは少女の目を見据えた。
「しかし、よく考えたら身近なところに良い選手が一人居てな…」
トレーナーのその言葉に少女の鼓動が高まる。
「そいつはまだ、デビュー戦もしてないが俺や会長の目から見ても十分に代役
が務まると判断した。どうだ、正式な試合じゃないし少々体重差もあるがやっ
てみるか?」
少女はその言葉を喜んだ。正式ではないとは言え試合を出来る事に。
「はい!是非お願いします!」
少女は喜びの色も隠さずそう答える。その様子に青年も喜んだ。
少女とスパーリングを重ねてきた青年は、一度でも良いから本気で少女と闘っ
てみたいと思っていた。
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