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BOXER M@STER(中編)

少女は実際にリングに上がると先ほどの、喜びが吹き飛ぶほど緊張した。
目の前には真面目な表情を浮かべた青年が居る。
「二人とも準備は良いか?」
そんな二人に声をかけるレフェリー代りのトレーナー。二人はその言葉に頷い
た。
「よし…それでは始める」
そうトレーナーが言うと青年は右のグローブを少女にナックルを向け掲げた。
少女も同じ様にグローブを掲げる。二人は互いにナックルを軽く付き合わせて
からファイティングポーズを取った。
それは少女が緊張した時、或いは気合いを入れる時に良くやる仕草だった。
青年の心遣いで少女の身体から無駄な力が抜ける。緊張と弛緩のバランスが取
れたそのフォームに青年はは一片の隙も見いだせなかった。
青年は少女の表情にも注目する。その表情は闘志が満ちていたが、目には冷静
さを湛えている。
少年の様だと感じる事もあった少女を美しいと青年は思った。それと同時に少
女を何時もより一回り大きく感じる。
対戦相手を大きく感じる。それは青年にとって初めての経験だった。
片手で数えられる程の試合しかない青年は物理的に先制する事でそれを打破し
ようと試みた。

間合いを計る少女の動きとシューズがリングを擦る音に神経を集中させ、少女
の未来位置を予測しながらジャブを放つ青年。更に青年はそれが単調にならな
い様に気を配った。
一方、少女はそんな青年を冷静に観察していた。青年の身長は170センチ強、
少女の身長は160センチ弱。その差は15センチ程あり少女が自分の間合い
に入る為には青年の制空権を潜らなければならない。
少女は慎重にそのタイミングを計っていた。
ふと、少女が間合いを詰める。青年の牽制は一見、不規則に感じられたがそう
ではなかった。それは一定のリズムに基づいている事に少女がに気づいた瞬間
だった。
少女の鋭い左ジャブが青年の顔を捕える。それはダメージ源としては乏しかっ
たが青年の動きを一瞬でも止める効果を発揮した。少女はそのままワン・ツー
を打ち込む。
青年はその攻撃に耐えながら右のアッパーを放つ。しかし、それを察した少女
は気配を察し上半身を僅かに反らした。少女の眼前を青年の拳が勢い良く通過
する。その風圧になびく少女の前髪。しかし、少女は怯むことなく攻撃を続け
た。

少女の左ボディフックが青年の脇腹を抉る。レバーを強打された青年の動きが
止まった。少女は手を止めることなく更に青年の鳩尾を右の拳で突き上げる。
だが、青年は少女の拳が到達する前に身体機能を回復させていた。僅かに身を
捩らせ、少女の拳を急所から守るとコンパクトな左ジャブを放つ。
しかし、その一撃は空を切った。少女はまたも、その気配を察し青年の制空権
から脱していた。
再び、距離を取って対峙する二人。しばらく、睨み合いをした後に青年は動き
出した。左手でリードジャブを繰り返し少女との間合いを計る青年。
少女はそのジャブの間合いぎりぎりを保っていた。青年は何か狙っている。少
女はそう直感すると青年の次の攻撃にカウンターを合わせようと狙っていた。
青年は少女の狙いに感ずいた。だが、あえて青年は攻撃に移った。
リードジャブから踏み込んでの右ストレートを放つ青年。少女もそれに合わせ
て右ストレートを放った。
少女の頬を青年の拳が掠め、風圧で耳の上の髪が浮かび上がる。しかし、少女
の拳は青年の頬を打ち抜いていた。それは身体の回転を利用した攻防一致の技
だった。
体勢を崩さずしっかりとマットを踏みしめ、足首、膝、腰、肩等の回転が加わっ
た少女の拳は衝撃で青年の顔を歪めると同時に汗を飛び散らせた。
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