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燃え尽きるまで(前編)


窓の外からネオンの輝きが覗く深夜のボクシングジム。そのリングの上で一組
の男女が向かい合っていた。
「良いんですか?こんなの…」
そう口を開いたのは女の方だった。その口調は安否を気遣うものではなく最後
の確認と言った感がある。
「ああ…構わない。君も判っているはずだ」
女の問いに男は答える。男のその口調にも表情にも動かしがたい決意が見て取
れた。その言葉に女は静かにグローブを差し出す。対する男もそれに倣った。
二人のグローブが合わさると互いにファイティングポーズを取る。
女は双葉理保。現役のグラビアアイドルであり、女子ボクシングフライ級の世
界王者として君臨している。そのデビュー当初は話題先行と批判を受けたが相
手に打たせないディフェンスと対戦相手を確実にKOするパンチ。そして、連
勝記録と防衛記録を延ばしその意見を封じ込めた。

理保がボクシングを始めた理由。それはレギュラー番組のあるコーナーで様々
なスポーツに挑戦する企画だった。暢気な性格とは裏腹にスポーツ万能な理保
はそのコーナーでボクシングへ挑戦した折りに意外な才能に気付く。
今、理保が所属しているジムとは別のジムで行われた企画の最終段階。男子プ
ロボクサーへパンチを何発当てられるかと言う場面になり理保のパンチは予想
以上にその男子ボクサーへパンチを当てていった。
そして、男は理保の予想外の攻撃に防御へ徹するという条件を忘れ思わず手を
出す。
しかし、理保はそのパンチをウェービングでかわすとカウンターパンチを男に
入れる。男をダウンさせる事はなかったものの、その光景は偶然と言うにはあ
まりにも鮮烈すぎた。その結果、理保はボクシングへとのめり込んでいった。

一方の男はかつてバンタム級の世界王者だった。しかし、その座から転落し今
では再び王座を狙える位置には居ない。だが、男はボクシングを諦めきれない
でいた。
かつての栄光は取り戻せないと男は理解している。その代わりに男は最後の舞
台を求めていた。それは男がボクシングを始める原因となったある漫画の主人
公の様な最後。
その闘いはベルトを掛けたものである必要はない。男はひたすら自分を納得さ
せる相手を求めて戦い続けていた。そんな男の前に現れたのが理保だった。
男の中で燻っていた炎が一気に燃え上がる。男はその事に何の疑問も感じなか
った。自分をボクサーとして最後の舞台へと向けて奮い立たせる存在。男にとっ
てはそれで十分だった。

しかし、男にとって障害が一つあった。それはマッチメイク。階級差もあり、
男女と言う事になれば試合はそう簡単に組めない。仮に組めたとしてもラウン
ド数の少ないエキシビジョン程度。
そこで男は一つの決断を下した。それは時間無制限で、どちらが最後まで立っ
ていられるかという過酷な条件での闘い。
男はその事を理保へと告げる。女とはいえその実力は全盛期とも言える時期の
理保。そのテクニックは男子ボクサーですら見習うべきだと言われている。
そして元王者とは言え、既にその実力は衰えている男。男も理保も互いの実力
を考えるとその結果がどうなるか分かり切っている。しかし、理保はそれを受
け入れた。それ程までに男の態度は真摯だった。

二人は互いにフットワークを使い間合いを計る。リングとシューズが擦れる音
が響き渡った。
男の身長は175センチ。その身体は全盛期に比べて衰えてきているとは言え
未だ逞しいものだった。
対する理保の身長は160センチ。胸下までのタンクトップとトランクスに包
まれたグラビアアイドルらしい艶やかな肢体にはアクセントの様に筋肉が浮き
出している。その筋肉はしなやかさと強靱さを兼ね備えておりボクサーとして
申し分のないものだった。
そして、何より目を惹くのは筋肉に支えられ砲弾のようにつきだした張りのあ
る双房。しかし、男はそれに見とれている様な愚かではなかった。
男はリングに立つ理保に美しさを感じている。しかし、それは女性に対するも
のではなく世界王者に相応しいボクサーとしての美しさだった。
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