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女王と道化師 前編

「アンタもムエタイを使うんだってな?」
髪の毛を逆立てにセットしボクサートランクス姿の男が目の前に立つ、金髪ショ
ートヘアのスーツ姿の美女に向かって挑発的な態度でそう言った。
男の名はジョー・ヒガシ。現役のムエタイ王者である。一方の美女はキングの
通称で呼ばれ、過去に性別を偽り裏社会で用心棒と生きてきた女格闘家である。
「ありがたく思えよ、王者であるオレ様が相手をしてやるから」
単身、ムエタイの本場であるタイに渡り長年、修行してきた余裕からかジョー
は尊大な態度でそう言うと馬鹿笑いを始めた。キングはそんなジョーの態度に
呆れた表情を以て応える。
しかし、ジョーはそんなキングの様子を気にも留めず尚も馬鹿笑いを続けてい
る。そんなジョーに放っておけば何時までも試合が始まらないと思いキングは
ファイティングポーズを取った。


「おうおう、やる気だね。結構結構」
キングのファイティングポーズを見てジョーは余裕の態度でそれに倣う。
「それじゃ、サクサク行こうぜ!」
ジョーはその一言と共に間合いを詰めキングにラッシュを仕掛けはじめた。
ムエタイの使い手とは思えないパンチの連打を放つジョー。対するキングはそ
の連打を冷静に見極め、可能な限りかわしそれが不可能ならば捌くように心が
け、ブロックする事は絶対にしなかった。
身長180センチのジョーと175センチのキング。その身長差は致命的とな
るほどのではないが体重ではジョーの方が明らかに上回っている。
しかも、その身体を覆う筋肉はボディ・ビルダーの様な見た目を優先した筋肉
ではなくムエタイのリングで戦い抜くために鍛えられたものだった。そんな身
体から繰り出される攻撃はブロックしてもダメージは蓄積されていくからだ。

ジョーのパンチでのラッシュはムエタイ使いとしては驚異的なものだった。
しかしキングにとって、それは裏社会の住人であった頃に闘ったボクサー崩れ
のラッシュに比べれば組し易く、付け入る隙も見出せた。しかし、キングは更
に隙が生まれる瞬間を待っていた。
ジョーはキングのディフェンスの巧さにパンチだけで倒せるほど甘い相手では
ないと悟った。だが、その表情に焦りは無く余裕の表情が浮かんでいる。
これはかわせるか?と言う思いを込めジョーはミドルキックを放とうとする。
その瞬間、キングの鋭い右ストレートがジョーの口元を捉えた。ジョーの前に
出ようとする勢いを利用したキングのカウンターパンチはジョーの動きを止め
る。

キングは更に踏み込むと左のボディアッパーをジョーの鳩尾に突き立てた。鍛
え様の無い急所に予想外の一撃を喰らい顎を下げるジョー。その顎をキングは
右アッパーで打ち上げるとジョーはよろめき自分の意志とは無関係に後退させ
られた。
ジョーは何とか踏みとどまり前に出ようとする。そこへキングの左の前蹴りが
ジョーの腹部を捉えた。キングの革靴の固い爪先がジョーの鳩尾を抉る。
打撃系格闘技の中でも驚異的ともいえる打たれ強さを持つムエタイ選手。しか
し、その打たれ強さも正確に急所を射抜く攻撃の前では無力だった。
立て続けにキングの攻撃を急所に喰らったジョーの膝が落ちかける。そこへ先
ほどジョーの鳩尾を捉えたキングの左足が跳ね上がりジョーの顎を穿つ。脳を
激しく揺さぶられジョーの神経が一時的に麻痺をする。そこへキングは右の後
回し蹴りを放った。その一撃は何にも妨げられずジョーの側頭部へ吸い込まれ
ていく。
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