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ヴァネッサVS京

アメリカ、とある街のミュージカルホール前でこれからKOFの予選が始まろ
うとしていた。
対戦者の一人はブルージーンズを履き、十字架模様入りの黒のシャツの上から
白いジャケットを羽織った青年。
古来から伝わる一子相伝の武術、草薙流の使い手である草薙京。
もう一人はアイビーグリーンのパンツに腹部を露出したノースリーブの白シャ
ツに赤ネクタイといった出で立ちの女。
本大会の女性参加者で最年長と言われるヴァネッサ。
これから始まる試合を前にして二人は特に気負いもなくリラックスした様子で
いる。
だが、目に見えぬ闘いは既に始まっていた。
KOFの影に陰謀あり。
長年、この大会に身を投じてきた京は今回もその兆候を感じていた。
京は目の前のこの女が陰謀の存在を知っているのか疑問に感じ、視線が合った
瞬間に並の格闘家なら退く様な鋭い目つきを送る。
だが、ヴァネッサはその視線を受け止めると心配御無用と言わんばかりの笑み
を一瞬だけ返した。

そこから京はこの女はただ者では無いと感じさりげなく視線を送りながらヴァ
ネッサの値踏みを始めた。
ヴァネッサの三十路とは思えないほど均整が取れ良く締まった肢体からは高い
身体能力が伺える。
そして、腕の筋肉とシャツの背中に浮かぶ背筋の付き具合からおそらくボクシ
ングの使い手であろうと京は予想した。
だが、何より京が注目したのはヴェネッサの何気ない一見、普通に歩いている
様に見えて足音をさせない歩き方と目を離した間に雑踏へと紛れ込んでしまっ
たのではないかと錯覚させるほどの気配の消し方だった。
京はかつてKOFの影に潜む陰謀を追っていたあるエージェントの男の存在を
思い出す。
そんな京の視線とヴァネッサの視線が再び交錯すると彼女は微笑んだ。
その笑みは大人の女の色香を感じさせると同時に京がヴァネッサの様子を窺っ
ていた事を見抜いたと語っている。
京はヴァネッサからさりげなく、しかし自分の行動が見抜かれていた事を恥じ
るかのように視線を逸らす。
こうして、試合前の静かな闘いはヴァネッサが制し幕を閉じた。

遂に試合開始が告げられ二人は構えを取った。
ヴァネッサは京の予想通りボクシングのファイティングポーズをとる。
それはオーソドックスに拳を顔の前に掲げるスタイルではなく片腕を下げた、
デトロイトスタイルと呼ばれる変則的な構えだった。
京はその構えに過去、KOFに参加したボクサーとの対戦経験は役に立たない
と判断し、先ずは隙の少ない技で相手の出方を探ろうとする。
足裁きを交え立ち位置を変えながら京は予備動作が少なく鋭い突きと下段蹴り
を次と々くりだした。
対するヴァネッサはその突きをウィービングで蹴りをステップワークでかわす。
更にはフットワークを交え自分の立ち位置が不利にならないように京の動きに
対応した。
中々、反撃の手を見せないヴァネッサに対し京は深追いしすぎ無いように時折、
攻撃の手を休め、距離を取る。
そんなやり取りが数度繰り返された後にヴァネッサの拳が閃光の様に走った。
京の左右の頬から擦過音と灼熱感が同時に生じる。
それはヴェネッサが放ったダブルのジャブが京の頬を掠めた証だった。
だが京はそのジャブに怯まずこれを機に一気に攻めようと頬から血を滲ませな
がら更に前へ出ると拳を振るう。
「ボディが甘ぇぜ!」

京の拳が炎を纏いヴァネッサの腹部へと向け加速した。
だが、その拳は元に在った位置とベネッサの腹部への半分の距離も移動しない
うちに留る。
京の鍛え上げられた腹筋にヴァネッサのボディアッパーが文字通り埋没してい
たからだ。
ヴァネッサのパンチスピード、体重の乗せ方、共にこの大会に参加しているだ
けあってプロアスリートの規格から大きく外れている。
その上、拳は金属の塊の様に硬かった。
それはエージェントとして数々の修羅場を己の拳のみでくぐり抜けてきた証で
ある。
ヴァネッサはその拳を更に振るった。
二発、三発、四発、ヴァネッサは左右のボディアッパーを次々と京の腹筋に埋
めていく。
京はその度に鉄塊を腹部に叩き付けられた衝撃と押しつぶされる内臓の痛みに
耐えた。
人でありながら人外の力を宿したオロチと闘うために鍛え上げられた肉体では
あったがヴァネッサの拳には耐えきれず京の膝が落ちる。
そこへヴァネッサの拳は京の顎へと目掛け打ち上げられた。

ヴァネッサの拳の威力をその身を以て知った京は身体の自由がきかないながら
も踏みとどまり上体を反らし彼女の拳が顎を直撃するのを避けようとする。
その努力は辛うじて実りヴァネッサのアッパーは京の顎を掠めるに留まった。
だが、京の膝を完全に落とすのはそれだけで十分だった。
顎から突き抜けた衝撃で揺さぶられた京の脳が機能を回復させたとき、彼の視
界には灰色のアスファルトが広がっていた。
まだ、僅かに朦朧とする意識の中で京は自分の姿勢を確認する。
京は完全にダウンすることは免れたものの四つん這いになっていた。
「ボディが甘かったのは君の方だったみたいね」
ヴァネッサの声が京の頭上から響いてくる。
「まだ続ける?それとも、もう降参する?」
中々、頭を上げない京に対してヴァネッサは挑発の言葉を投げかけた。
京はその言葉に顔を上げ睨み付けてからゆっくりと立ち上がった。
息を整え、構えを取る京。
その様子にヴァネッサは笑みを浮かべた。
「まだまだ若いんだからそう来なきゃ」
京はヴェネッサの言葉に弾かれ先程までの冷静さを置き去りにして一気に間合
いを詰めた。

次々と突きと蹴りを繰り出す京。
その動きには淀みはない。
対するヴァネッサも持てる防御技術の全てを駆使して次々と京の攻撃をかわし
ていく。
無論、その合間の反撃も忘れない。
脇腹をボディーフックで抉り、腹部へボディアッパーを突き立て、内臓を押し
つぶし、顎をアッパーで打ち上げ、頬をフックで穿ち脳を揺さ振った。
しかし、京はアドレナリンの過剰分泌でヴァネッサの反撃に怯むことなく荒れ
狂う嵐のように攻撃を繰り返す。
ヴァネッサはそんな京を深追いしすぎて思わぬ反撃を喰らわないよう二、三発
のコンビネーションを繰り返しヒットアンドアウェイに徹する。
だが、それも長くは続かなかった。
ヴェネッサの拳は確実に京を蝕み次第にその勢いは衰えていく。
「ナイス・レンジ」
勢いを失った京の回し蹴りをかいくぐりヴァネッサは歌うようにそう言うと拳
を振るった。
ヴェネッサの低い姿勢から豪快なクロールのようなフックが京の鼻梁を捉え押
しつぶす。
更にベネッサはそのクロールフックが限界まで伸びきったところで逆の手でボ
ディアッパーを繰り出した。
今までのボディアッパー以上に身体の捻りが加えられた一撃は京の腹部を一層、
深く抉った。

もし正気の京ならその場で崩れ落ちただろう。
しかし、今の京は興奮状態にありまだ倒れなかった。
そこへヴァネッサは京の心臓へ目掛けストレートを突きだした。
激しい衝撃に心臓が一時的に麻痺し京の身体が揺らぎ始める。
その顔は口の端や鼻から血を流し目蓋や頬が腫れ上がっていた。
だが、ヴァネッサは京の反撃を警戒するかのように上体を数回振ってから彼
の様子を窺う。
対する京は未だに回復の様子を見せない。
ヴァネッサは意を決すると拳を地に付けるような低い姿勢から渾身のアッパ
ーを放った。
京の身体が高く舞い上がり錐揉みしながらアスファルトへと向かい激突する。
だが、ヴァネッサはまだ構えを解かなかった。
そんなヴァネッサの前で京は幽鬼のように立ち上がる。
京はアスファルトに叩き付けられたショックで正気を取り戻していた。
全身を苛む激しい痛みをKOFの裏に隠された陰謀を暴くと言う使命感で押さ
えつけ京は精神を集中し炎をイメージする。
そして、闇払いを放った。
大地を炎が駆けヴァネッサへと迫る。
ヴァネッサはその炎をかわすこともなくストレートを打ち出した。
その衝撃波が炎を打ち消し更には京を吹き飛ばし高層ビルの壁へと叩き付ける。

壁面へと叩き付けられた京はその場で崩れ落ちた。
だが、京は瞳に僅かな光を宿らせたまま未だ失われていない使命感に突き動か
され立ち上がる。
「せっかく、インファイトを楽しんでたのに飛び道具なんて無粋な子ね」
ヴァネッサは不満げにそう呟く。
「そう言う子にはお仕置きが必要よね」
立ち上がりはしたものの、まだ構えもせず覚束無い足取りでヴァネッサの元へ
と向かう京に彼女は一言、告げると一気に間合いを詰めた。
そんなヴァネッサに対し京は無防備に歩みを進める。
「それじゃ、お仕置き開始」
ヴァネッサは京を制空権に捉えると気分が良さそうにそう宣言した。
先ずはフットワークを駆使しながらジャブの連打を京にお見舞いする。
京はそのジャブを食らう度に右に左によろめいたがそこには常にヴァネッサが
先回りしていた。
「これから少しきつくなるわよ」
次いでヴァネッサはアッパーの連打を開始する。
京の顎が打ち上げられ、頭蓋骨はシェイカーと化し脳を激しく掻き混ぜられる。
そして、膝から崩れ落ちそうになる度にヴァネッサのアッパーが京の顎に叩き
付けられた。

異様な跳躍を繰り返す内に京の瞳から光が失われた。
そこへヴァネッサの強烈なフックが頬へと吸い込まれる。
京の口から、折れた歯と血と唾液が入り交じったものが迸った。
アスファルトに目を落とすとそこかしこにヴァネッサの鋼の拳によって京の体
内から零れた血や汗の染み、更には白い欠片が散らばっている。
そして、京は今その中へ身体を泳がせ飛び込もうとしていた。
「お仕置きは終ってないわよ」
ヴァネッサはそう言うと京の奥襟を掴み京の腹部へとボディアッパーを見舞う。
振り子のように京の身体が揺れた。
ヴァネッサは京を片手で吊ったままサンドバックを打つように何度も繰り返し
ボディアッパーを打ち込む。
京の本能はそんな状況から逃れようとヴァネッサの腕を振り払おうとしたが僅
かに身じろぎさせただけだった
やがて京はヴァネッサに吊られたまま身じろぎ一つしなくなった。
ヴァネッサは京の奥襟から手を離すと渾身のアッパーを京の顎へ目掛け繰り出
す。
京は顎を砕かれ再び宙高く舞うとアスファルトへと叩き付けられた。
「まだまだアオイわね…」
血溜りを広げながら痙攣を繰り返す京を見下ろしヴァネッサは形の良い胸を押
し上げ、強調するかのように腕を組んだ。
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