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あなたのハートをノックアウト

 俺は真に負けてから今まで以上にトレーニングに明け暮れていた。勿論、真
と再戦するために。そこへ試合の申し込みがきた。対戦相手の名は三浦あずさ。
真と同じプロダクションの所属。ふと、俺は拓海の所属も気になり調べてみる
と彼女も真と同じプロダクションの所属。
 俺は拓海と真との闘いを思い出した。俺は拓海を真の様に全てを認めるつも
りはまだ無い。だが、その強さは認めざるを得ない。つまり、あずさも強敵だ
と判断に値する。俺はそう考えトレーニングを進めることにした。
 ロードワーク中、偶然にもあずさと会う機会に恵まれた俺は少しだけ彼女と
話してみた。格闘技とは縁の無さそうなおっとりとした性格。それが俺の印象
だった。
 しかし、リング上で再びまみえたあずさは別人の様に感じた。穏やかではあ
るが自身に満ち溢れた表情。その姿に背筋が凍りそうになる。
 あずさのファイトスタイルはリングの外で会った時に感じた性格とは正反対
だった。次々と重いパンチを繰り出しながら圧力をかけてくる。勿論、そのパ
ンチもただ振り回すのではなく、しっかりと俺のガードを揺さぶり生まれた綻
びを突いてくる。
 下手に逃げようとすればその圧力でコーナーへと追い詰められてしまう。反
撃するにはあずさのハンドスピードは俺が対抗できるかと言えば間違いなく俺
がカウンターを食らう。しかし、ガードを固めているわけにも行かない。そし
て、俺は敢えて打ち合いに応じる事を選んだ。
 予想通りあずさの重く硬い拳がカウンターで俺を捉える。一瞬、意識が飛び
かける俺。そして、その一瞬が俺にとって命取りになった。
 俺が回復する前に次のあずさの重い一撃が襲いかかってくる。その衝撃で俺
の神経は再び麻痺を起こし、その間にまたあずさの拳が叩き込まれる。
 あずさのパンチは爆撃とも言える破壊力を以って俺のスタミナを奪っていっ
た。俺はあずさの絨毯爆撃の様なラッシュに耐えながら止めの一撃を待った。
狙うはカウンター。
 もう一発しかパンチを打てない。そこまで俺が追い詰められた時、機会は訪
れた。止めと言わんばかりに大きく拳が振りかぶられる。俺はそれに合わせて
左のストレートを放った。
 だが、それをあずさは僅かに首を傾けただけでそれを外す。代わりにあずさ
の右ストレートが俺の胸に捩じ込まれた。
 心臓を狙い相手の動きを止めるハートブレイクショット。その威力は俺の胸
骨が軋みを上げるほどのものだった。
「お疲れ様でした」
 あずさは自分の拳に伝わった手応えに俺が持たないと確信する不意に背を向
けた。そして、俺はあずさの確信通り膝から下の支えが無くなったかのように
崩れ落ちる。全身から力が抜け全く力が入らない。意識はあるが身体の自由が
全然効かない。
「あなたのハートをノックアウト…ですね」
 俺が崩れ落ちるのを感じ取りそう宣言するあずさ。俺は素直にあずさとの闘
いに負けた事を認めていた。

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銀河最強の拳

 またボディで浮かされた……腹筋を貫き背中拳がから飛び出したのではない
かと錯覚するほどの衝撃が俺の内蔵を押しつぶす。
 今回の対戦相手もアイドルと聞いた時は冗談じゃないと真剣に思った。確か
にこの前の試合でアイドル相手に負けたことは認めるが俺は噛ませ犬ではない
と憤った。
 しかし、対戦相手の名を聞いて俺は考えを改めた。その名は菊地真。800
戦無敗のステゴロ・ザウラーのどんな攻撃も強靭な肉体で受け止めるというデ
モンストレーションをたった一撃で粉砕した少女だ。その後、ザウラーが担架
で運ばれる姿をこの目で見た俺は演技などでは無いと直感した。
 あまりの強さに銀河最強等と気恥ずかしくて名乗れない称号を与えられた彼
を一撃で仕留めた真の拳は銀河最強の拳と言って過言ではない。
 そんな真の格闘家としての才能を俺は計り知れないものと感じ取り、彼女が
格闘技をするならばそれは他の女とは違い本物と認めて良いとすら思っている。
 俺はそのつもりで調整を進めた。
「ボディがガラ空きですよ!」
 せめて一矢報いたい。そんな思いで俺が放った右フックは当然の様にと空を
切る。しっかりと狙いを定め放ったはずの拳を真が躱す気配もなかったのに何
もない空間を打つ。それはこの試合でずっと感じていたことだった。
 そこへ俺を浮かせた真の左のボディ・アッパー。衝撃の後に言い放たれた真
の言葉と共に今度は実態を持った拳が俺の腹筋に埋没し内蔵を噛み砕いていく。
 遂に放たれたザウラーを沈めた拳をその身で噛み締める俺。しかし、それだ
けの一撃を放つ素振りを真は見せなかった。それは放たれたと言うより置いて
あったと表現した方が正しいほどに。勿論、その感覚はこの一撃に限らなかっ
た。試合開始から今まで感じ続けていた事だ。
 今まで蓄積していたダメージに加えザウラーすら一撃で沈める真の拳に耐え
かねた俺は膝をつき身体を折り曲げる。その途上、一瞬だが真の表情が目に飛
び込んでくる。俺はこの状況でもその笑顔が眩しいと真剣に思った。
 スローモーションの様にマットが近づいてくる中、俺は真がこの試合中、い
や、リングに上がってから笑顔を絶やさずにいたのを思い返した。その笑顔は
俺を嘲るわけでもなく侮っているわけでもない。
 持てる技倆を全て発揮し勝敗に拘らず競い合う事が楽しくて、嬉しくてしょ
うが無いと言う純粋な笑顔。
 すぐそばに立っているはずなのに遠くから聞こえるかのような真の勝利宣言
と再戦を希望する声。その声からも笑顔と同様のものを感じた。そして、俺は
真の強さがどこから生まれてきたのか悟った。
 俺達は勝った負けた以外の事は考えない。相手を倒すことが強さの証明だと
信じている。しかし、真からはそんな気持ちを欠片も感じない。勝敗への無欲
さ故にたどり着いた境地。悟りの様なものだ。
 俺達の強さが大海を横断しようと競う合う小舟ならば真の強さは大海そのも
の。だが、大海は荒れ狂い、時に小舟を呑み込んでしまう。それでもきらめく
海原と広がる青空、照りつける太陽は美しい。
 俺は何も手出しができずに真に負けたのに完全に魅せられていた。荒れ狂う
波が真の拳ならば、それを乗り越える日が来るのか分からない。俺には真の様
に悟れないからだ。
 それでも俺は遠のく意識の中で再戦を堅く決意した。真の闘う姿は俺には美
しく魅力的だからだ。その美しさは鑑賞するものではなく肌で感じるものだと
俺は揺るぎない確信を持っていた。

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ぶっこみの拓海

 今度の対戦相手は不良上がりだと聞いていた。俺はどうもこの手の相手が好
かない。最も大事な時期に無駄にエネルギーを浪費している。中には格闘技を
始めて立ち直る奴も居るがそういう奴は俺に言わせれば稀だ。
 今回の相手はどうだろうか?俺はそれを見極めるつもりでリングに上がるつ
もりだった。そんな俺に衝撃的な一言が告げられた。対戦相手はアイドルで女
相手のエキシビジョン。
 俺は女が格闘技をする事に嫌悪感しかなかった。どんなに鍛えようと体力も
腕力も男に劣る。はっきり言ってそんなものはお遊戯くらいにしか思っていな
い。
 俺は対戦相手に思い上がりだと思い知らせるために入念に調整した。元不良
と言うのも気に入らないと言う事もあり、調整は一層力が入る。
 遂に試合の日が訪れる。眼の前に立つ女は向井拓海と呼ばれ、不良どもが好
んで身に付ける紫色で彩られたタンクトップにトランクス、リングシューズを
身に纏っていた。
 唯一、グローブは赤かったがそれも俺には気に喰わなかった。俺のグローブ
は青。格下扱いされている気がしてならない。
 だが、俺はそんな思いを抑え込んだ。冷静さを失えば勝てるものも勝てなく
なる。そして遂に試合が開始された。
 相手は俺よりウェイトで劣っている。フットワークを駆使して俺を撹乱して
くるだろうと踏んでいたが、拓海はジリジリと間合いを見極めてくる。
 打ち合うつもりなら話は早い、さっさと終わらせてしまおう。俺はそう考え
拳を繰り出した。
 だが、それは風切り音とともに虚しく空を切る。それと同時に俺の顔から弾
ける打撃音。
 一瞬、その姿勢を保つ二人。見れば拓海は紙一重で俺の拳を躱し反撃の手を
繰り出していた。口元には不敵な笑みを張り付かせている。
 その様子に俺はこれが偶然ではないことを悟った。気を取り直し一発、二発、
三発とコンビネーションを繰り出す俺。再び拓海はそれを躱していく。
 しかし、三発目は二発目が躱されたことを織込み済みの攻撃。それもあっさ
りとパーリングで逸らされた。
 続いて拓海のコンビネーションが俺に降り注ぐ。想像以上に重い打撃音と共
に俺はぐらついてしまう。
 拓海はどうやら階級以上のパンチを持っているようだ。俺はその事実に焦り
はしなかった。世の中にはそういう奴も存在する。
 俺は努めて冷静に闘いを進めた。俺の一発が当たれば拓海は崩折れる程の細
身。それで相手は身の程を思い知る。
 時間は刻々と過ぎていった。俺の拳は一切、拓海に触れること無く、拓海の
拳は俺の脳を揺さぶり、肉体を切り刻み内蔵を抉り蝕み続ける。
「悪いね。あんたの動きわかりやすいよ。木刀や金属バットを振り回してくる
素人のほうが何をしでかすかわからなくて怖いぜ」
 あいも変わらず俺の拳を紙一重でかわしながらカウンターを繰り出してくる
拓海がそう言う。
 しかし、そう言う拓海の攻撃が大振りになってきたのを俺は見逃さなかった。
右手を大きく振りかぶった瞬間、俺は懐に潜り込みつつボディストレートを繰
り出そうとする。
「遅いんだよ!オラァッ!」
 そう聞こえると同時に俺の視界が左下へ急転した。そのまま崩れ落ちそうに
なる俺。
 そこへ鳩尾から背中へと突き抜ける衝撃と浮遊感を味わう。俺の身体が浮く
ほどのボディアッパー。それが正体だった。
「どうした?プロの戦いってやつを見せてくれよ」
 俺は鳩尾を拓海の拳を突き立てられたまま、これ以上は戦えないことを悟っ
た。
 拓海の拳が俺の腹から引き抜かれると同時にマットが徐々に近付き始める。
しかし、俺はその様子を最後まで見届けることができなかった。

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ラブリーダンスは死の舞踏

 俺は第2ラウンド開始直後から押され続けていた。
 対戦相手は双葉理保と名乗るグラビアガール。ハイスクールの坊主どもに媚
態を晒して小遣いを稼いでる小娘だ。
 信じられない事にそんな小娘がボクシングをやっていると言い、俺に挑戦状
を叩きつけてきた。
 グラビアガールが何を意気がって俺に挑戦してくるのか、ふざけるな。徹底
的に叩きのめして二度と人前に立てないよう綺麗な顔を潰してやる。
 俺はそう思い挑戦を受け、いつも以上に入念な調整をしてから俺はリングに
立った。
 眼の前に立つグラビアガールの理保が俺に向かい笑いかけてくる。そして、
俺もその笑いに応えた。俺の拳がその顔をグチャグチャにし、泣きながら許し
を乞う様子を想像しながら。
 やがて試合開始のゴングが鳴る。俺は無造作に近付き大振りの右フックを繰
り出した。それでこのクソ生意気な女は怯え、俺の好きなようにできる……は
ずだった。
 実際のところは理保の左ジャブで止められた。それも、ただのジャブではな
い。腕を鞭の様にしならせ、鋭く俺を切り裂くようなジャブ。
 俺を止めるためではない、カウンターで仕留めようと放たれたジャブだった。
 俺の背筋に氷の剣を突き刺されたような冷たさが走る。更に俺はパンチを貰
い身体が麻痺した時以上に動けないでいたようだ。
 そんな俺を現実に引き戻したのは理保の右フックによる頬から脳へと突き抜
ける衝撃だった。
 そこで俺は直ぐ様、戦闘態勢へと戻った。理保の上半身を見据え次の攻撃に
備える。
 次々と襲い来る理保のパンチ。俺はそれを防御し躱そうと試みたが理保のパ
ンチは早く鋭く俺を抉り切り裂く。
 俺を1発2発で致命的な状態に追い込むほどの重さはない。しかし、着実に
俺を追い詰めてるには十分なパンチを右から左から上下に揺さぶりコンビネー
ションを打ち込んでくる理保。
 勿論、俺はその合間に反撃を試みたがパーリングであっさりと軌道をそらさ
れる。それは理保の俺のパンチなど躱す必要もないと言うアピールだった。
 俺は全く良い所がないまま第1ラウンドを終えた。だが、諦めたわけではな
い。俺のパンチが一発でも当たれば逆転できる、俺はそう信じていた。
 そして、第2ラウンドが開始されると俺の考えは完全に間違いであることを
思い知らされた。
 理保は開始直後から次々とパンチを繰り出し圧力をかけてくる。そのパンチ
は1ラウンドの時より鋭く激しく俺を切り刻んでいった。
 脳を揺さぶり、内臓を抉りかき回す理保のパンチの前に俺はなすすべなく晒
されサンドバッグ代わりにされ続けている。
 一方的に嬲り徹底的に虐め抜くつもりだった俺が逆に理保に嬲られ傷めつけ
らいじめ抜かれていた。
 もう終わりにしてくれ……そう思った俺は背中にロープの感触を感じる。そ
こで理保のラッシュが一層、激しさを増した。
 その激しさに俺はやっと開放されるという安堵感の中、全身から力が抜け意
識を失った。

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BOXER M@STER

 俺はとあるアイドルのボクササイズDVD、ミリオンセラー記念のイベント
でエキシビジョンマッチをすることになった。
 アイドルのパンチを適度に躱し、ガードしながら程々に反撃の手を出す。無
論、俺のパンチは当てずに適当なコントロールをする。そんな、簡単な仕事の
はずだった。
 受けた理由は何のことはない。俺は彼女のファンであった。ただ、それだけ
の事。
 実際に彼女が実演するDVDも見たが、かなり綺麗な基本フォームで次々と
パンチを放つ姿に俺の心は躍った。
 少しばかり風変わりではあるが彼女のダンスパートナーを務める事ができる
と俺は有頂天になっていた。
 ところが蓋を開けるとその幻想はあっさりと打ち砕かれた。
 ヒールが高めのブーツで俺がついていくのがやっとと言うフットワークを刻
み、鋭いパンチを次々と繰り出してくる。
 特に左ジャブは白いグローブがカメラのフラッシュの様に一瞬で迫り来る。
 なんとか目が慣れてきた頃に、それを躱そうと試みたが俺の頬がざっくりと
裂けてしまった。
 俺は少しばかり試合をする振りをするつもりだったが本気で闘わなければな
らなくなった。
 気を引き締め、彼女の露出度の高めなステージ衣装から覗く筋肉の動きを意
識し、彼女の繰り出す拳を見極めようと心掛ける。
 だが、俺は彼女の動きを捉えることはできなかった。
 彼女の動きは在る偉大なボクサーが口にした蝶のように舞い蜂のように刺す
と言う言葉通りだった。
 俺の攻撃を易々と躱し彼女は鼻歌交じりに次々と俺の身体に其の拳を埋め、
俺の体力をどんどん蝕んでいく。
 俺はその様子に戦慄を覚えた。彼女の刻むリズムは俺が試合前に何度も繰り
返し見たエクササイズプログラムそのものだったからだ。
 俺の攻撃をウェービングで避けパーリングで逸らし、リズミカルに激しく彼
女はパンチを打ち込んでくる。その度に俺の内蔵は抉り潰され、脳がカクテル
の様にシェイクされた。
 そして、第一ラウンドの終わりまで残り時間十秒ほどまで俺は徹底的に打ち
のめされ満身創痍となっていた。その間に彼女が天才的ボクサーであり、天性
のハードパンチャーで在ることを俺は思い知る。
 膝は何時落ちてもおかしくないほど笑い、意識も朦朧としていた。そこへ彼
女の容赦無い左のダブルが襲いかかってきた。
 右の脇腹、肝臓の辺りを猛獣が食い破ったのではないかと思わせる一撃。そ
の一撃に耐えかね、遂に俺の膝が崩れ始めた。
 そこへ更に右の顎を斜め下から彼女の拳が救い上げる。ボディフックを打つ
要領で顎を撃ち抜くスマッシュ。俺の首が捻じれ、次いで身体が捻られ、リン
グへと叩きつけられた。
 薄れいく意識の中、彼女の声が妙に耳へと響いた。それは彼女のボクササイ
ズDVDの謳い文句だった。
 彼女が更に何か言葉を続ける。しかし、それを俺は明瞭に聞き取ることがで
きなかった。

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