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隆の憂鬱

 深夜の城跡にベルトが千切れた様な音が響き渡る。
「ッ!」
 道着姿の男の口から声にならない断末魔の叫びが漏れた。男の名前は隆、真
の格闘家を目指し日々修行に明け暮れている。
 幾多の闘いを勝ち抜いてきた隆ではあるが彼の前に立ちはだかる壁があった。
中国人女性武術家、春麗。一度はその剛脚から繰り出される多彩な蹴りの前に、
今一度は片手で数えるほどの闘いで身につけたボクシングの前にまるで打ち古
されたサンドバッグの様にされ敗北を喫していた。
 春麗に勝たなければ真の格闘家への道はない。そう決意した隆は驚異的な回
復力で傷も癒え体調も元通りになった所で修行の旅へと出た。そして、日本に
戻ってきた出会ったのが、今、隆へグローブで覆われた手でアキレス腱固めを
決めている、ハイレグレオタードに身を包み、サイハイブーツを履いたこの女
子格闘家だった。

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女教師、夜のレッスン その2

 ある有名体育大学に推薦で俺は合格した。勿論、あの女教師のお陰だ。
 今まで、俺は先生とのスパーばかりに触れてきたが筋力や体力トレーニング
の内容も先生が全て組んでくれている。
 先生は俺ほどの逸材は見たことがないと言っていたが、俺は未だに先生に拳
を触れることも出来ずに居る。素直には喜べない褒め言葉だ。
 更には妙な噂まで付きまとい始めている。俺が先生と付き合っていると言う
噂だ。個人的なボクシング指導、しかも、KOのオマケ付きスパーまで在るの
が、お付き合いというのであれば、俺は性的倒錯者と言うやつだ。頭が痛い。
「何を悩んでるのかしら、少年」
 背後から俺を悩ませている当の本人の声がする。振り返った俺は顔が熱くなっ
ていくのを感じた。先生の声が妙に艶っぽかったからだ。
 そんな、俺を悪戯っぽい笑みを浮かべたまま見つめる先生。周りの生徒達が
ヒソヒソと声を交わしながら通り過ぎていく。
「今夜、付き合いなさい」
 周りの視線に気づいたのか先生はわざと俺の耳元にで艶かしい声でそう囁い
てから立ち去る。女子生徒の黄色い声が鼓膜に男子生徒の嫉妬の視線が全身に
突き刺さる。誤解はますます深まるばかり。
 しかし、俺は今夜の事を思うと身が引き締まっていった。

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お年玉

 俺はオクタゴンの中で対戦相手を待っていた。相手は女子総合格闘家、いわ
ゆるエキシビジョンマッチと言うやつだ。
 やがて花道をミニ和服に身を包んだ女が歩いてくる。その顔は紛れもなく対
戦相手の女。元空手王者、元プロレスラーの肩書きを持つ女。
 本来、真剣勝負向きの性格なのか総合格闘技に転向してからは負け知らずを
誇っているそうだが、流石に階級が上のしかも男の俺を相手にしようとは無謀
過ぎる。俺はそれを思い知らせるために試合を受けた。
 ついに女がオクタゴンへの入り込んできた。だが、様子がおかしい。女はガ
ウン代わりと俺が思っていたミニ和服を着たままシャドウを始めた。
 ふざけてるにも程がある…俺はそう思いマウスピースを食い千切れるのでは
ないかと思うほどに歯をかみしめ、グローブの保護されていない手のひらに指
が食い込みそうなほど拳を握り締め、睨みつける。
「松の内だし、折角だから華やかに行かせてもらうわ」
 俺の視線に気づいたのか女はシャドウをやめると歩み寄って来た。
 それから暫く睨み合いの後、試合開始のブザーが鳴り響いた。俺は身構える
と一旦、間合いを取る。対する女は間合いを測る俺に常に正対する様に身構え
続ける。

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女教師、聖夜のレッスン

 今日も俺は女教師からレッスンの呼び出しを受けた。
 未だ、俺の拳は先生の身体をかすることも出来ずダウンさせられるだけのレッ
スン…
 しかし、皮肉な事にそのレッスンは俺のディフェンステクニックの向上に繋がっ
ていた。先生のハンドスピードは閃光と形容が相応しいほどに早い。
 それをガードや回避しようという試みは成功した回数を指折りで数えられるほど
だが、先生のパンチに反応しようと試みた努力は無駄ではなかった。
 同世代の選手のパンチなら大概、防ぐことが出来るのである。
「私に負けた悔しさをバネによく成長したわね」
と先生は励ましてくれるが俺の心中は複雑だ。強豪校の選手やプロデビューできる
と噂される選手よりも遥か高い次元に存在する女教師。
 俺は先生をボクシングの神様が女教師の姿で降臨したと納得しようとしてきたが
それも上手くいっているとは言い難い。その反面、先生ほどの強さのボクサーの胸
を借りることが出来るのは幸運と言う程度の言葉では済まされない。
 そして、その女教師から聖夜のお誘い。これがデートならば高校生の俺にとって
は過ぎたものだが、いつもの様に誰もいないジムでの実戦スパーリング。
 ただでさえ先生には複雑な思いが更に深まっていく。
 ここ暫くは先生も俺のディフェンスの向上を認めたのか
「ちょっと本気を出すわよ、危ないからヘッドギアとカップをつけなさい」
と防具の装着を義務付けていた。
 俺はジムに着くと早速、着替え防具も身につけリングに上がる。そこへ現れたの
はどこで仕入れたのか頭を悩ますサンタ衣装に身を包んだ先生だった。
 無論、その手にはグローブがはめられている。
「今日は頑張るキミに特別レッスンよ」
 そう言うと先生はファイティングポーズを取った。その構えに一分の隙も認めら
れず先生から沸き立つオーラが俺の背筋に冷たい刃を突き刺す。
 セクシーサンタが殺気を剥き出しで自分と対峙すると言う奇妙なシチュエーショ
ン…しかし、俺は闘志を奮い立たせこのレッスンへと臨んだ。
 そして、結果は惨敗。
 パンチと叱咤のプレゼントをたっぷりと貰い脳を揺さぶられ、内蔵を抉られ立っ
ているのがやっとという状況。
 だが、俺は先生の「本気」と言うプレゼントに応えたいが一心で拳を振るう。
 正面に立っていたはずの先生は一瞬でその姿を消し、俺の左脇に先生の右拳が
力の限り抉り込まれる。
 その威力に俺は堪らず大量の唾液をまとわりつかせたマウスピースを勢い良く
吐き出した。
 先生が何か言っていたようだがその声は俺の耳には届かず内蔵が口からはみ出
しそうな激痛の中、リングへとうずくまっていった。

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ドリーム・ファイト・クラブ2

 俺はパンチを躱され続けて肩で息をしていた。
 ムキになりパンチを振り回した続けたせいでダメージを受けたわけでもない
のに足を前に踏み出すことも出来ず腕は構えるのがやっとと言う程に疲労が蓄
積している。
「それじゃあ、身体も温まったので行きますよ~」
 対戦相手、双葉理保が頬を上気させながらそう宣言するとローファーパンプ
スを鳴らしながら一気に踏み込んでくる。その足音に俺は自分を散々、翻弄し
続けた理保のフットワークが脳裏をよぎった。
「ラブ・アッパー!」
 理保は楽しそうに声を上げながら大きく腕を振りかぶる。それがわざとだと
言う事は真剣に闘う理保の姿を知っている俺には理解できた。
 不意に周りの音が聞こえなくなり視界が色を失う。そして理保の動きが緩慢
に見え始める。
 人間は危機的な状況になると一部の情報を遮断し一番大きな危険を回避しよ
うとする。モノクロームのスローモーションでまっすぐ俺に迫り来る理保の拳
を見つめながらそんな話を思い起こした。
 だが、そんなでも俺の身体は動こうとはしなかった。いや、動けなかった。
 激しい衝撃とともに俺の視界が色を取り戻す。次いで途切れることのない打
撃音と同時に視界と脳が右に左に揺さぶられる。
 ヘッドギア越しですら意識を刈り取ろうとする理保のフックの連打。その速
さに俺は倒れることも許されず為す術なく打たれ続けた。そして、構えていた
腕が力なくだらりと垂れ下がる。
 そこで理保の乱打は一旦、停止した。前のめりに崩れ落ちようとする俺。そ
の顎を理保は拳を一気に振り上げ打ちぬいた。
 ぐんぐんと近づいて来る天井。その事実に理保は倍以上も体重がある俺をアッ
パーでロケットのように打ち上げたのだと悟った。

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