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伝説の女

 向井拓海は夜道をゆっくりと歩いていた。芸能プロダクションからアイドルとして
の素質を見出され、多忙な毎日を送っている。
 170センチと長身に上から95、60、87と言うスリーサイズ。それでいて性
格は絵に書いた様な姉御肌と言うのが受けて今は売りだし真っ最中だった。今日も規
模は小さいがライブハウスを満員にしてのライブをこなしてきたばかり。
 熱気に満ちたライブハウスを出てから拓海は涼しい夜風を心地良く感じながらのん
びりと歩いている。そんな拓海の耳につんざくような爆音が響き渡る。
「またかよ……プロデューサーの言う通り、タクシーで帰りゃよかったな……」
 徐々に近づいてくる爆音に足を止めた拓海は独りごちた。拓海にとってその爆音は
耳慣れたものではあったが今は出来れば関わりたくないものであった。
 やがて爆音の発生源は遂に拓海の目前に現れる。原型を留めないほど改造された十
数台のバイクと数台の高級車が拓海を取り囲んだ。
 何れのバイクにも特攻服を羽織り、口元はマスクを隠し、髪の毛はオールバックか
リーゼントと言う男達がまたがっている。更に男達は拓海をアクセルを捻り、威嚇す
るかのように空ぶかしを繰り返していた。
 その中を高級車の後部座席から一人の男が降りてくる。そして、その男が拓海の眼
前に立ちはだかると手をかざした。それと同時に爆音が鳴り止む。
 その所作にこの男が一団のリーダーであると確信した。

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通過儀礼

 とある大学の構内。感慨深げに古びてはいるが手入れの行き届いた空手部の看板を見つ
める一人の青年がいた。その視線には空手の強豪校として知られるこの大学に入れたと言
う歓喜に満ちていた。
 精悍な顔付き、短く刈り込んだ髪型、着衣の上からもわかる鍛えられた身体が青年が如
何に熱心に空手に打ち込んできたかを伺える。
「君は入部希望?」
 看板を眺める精悍な顔つきの青年の耳にハスキーな女性の声が響く。声に青年は振り向
いた。
 視線の先にいたのは一人の女性。しかも僅か1メートルほどの距離にいる。幾ら看板を
見つめてたとは言え、これほどの距離まで彼女が近づいてきた事に全く気づかなかった事
に驚いた。
 そして、もうひとつ驚いたのは身長180センチ近くある自分と同じ目線の高さにショ
ートカットの女性の顔があったことだった。
「もしかして、君は……推薦入学の竜堂勝君?」
 長身の女性は一度、記憶を探るようにしてから嬉しそうに言った。
「ええ、そうです。俺が竜堂勝です……貴方は?」
 長身とは言えモデルのような体型の女性から自分の素性を言い当たられ驚く勝。
「そうそう自己紹介がまだだったわね。私は結城亜理沙、こう見えても女子空手部主将よ」
 そう言って亜理沙は微笑む。空手をやっているとは思えない優しげな癒し系美人の笑顔
に勝はドキリとした。
「うちの学校は男女共同でこの道場を使ってるの。合同での稽古もあるし、よろしく」
 内心で完全に上がってる勝をよそに亜理沙が挨拶をする。
「お……押忍!よろしくお願いします!」
 亜理沙が女子空手部とは言え主将であると判り、勝は姿勢を正すと深々と礼をした。

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ヒトミVSジャン・リー

 デッド・オア・アライブの試合会場の一つであるとある道観でジャン・リー
は対戦相手が現れるのを待っていた。
 身体を暖めるために屈伸や跳躍を繰り返すジャン・リー。炎をあしらった功
夫着の下履きとリストバンド、靴のみを身につけ露になった上半身は無駄なく
鍛え抜かれていた。
 ひたすら強敵を求め彷徨う男ジャン・リー。ジークンドーの道を極め用心棒
まがいの仕事を重ねながら街から街へと流浪する日々。
 ジャン・リーは常に戦いに飢えていた。そんな彼がデッド・オア・アライブ
に参加したのは未だ見ぬ強敵を求めての事だった。
 そんな、ジャン・リーの前に十代後半と思しき銅色の髪、碧眼の少女が現れ
る。その顔立ちは東洋人の面影が見て取れる。
 その少女の正体はヒトミと言う名の空手家だった。日本人とドイツ人のハー
フであり父はドイツの空手界の重鎮である。そして、ヒトミは十八歳という若
さで、その父を超える実力を身につけていた。
 しかし、その服装はタンクトップにジーンズと武道家には似つかわしくない。
 ジャン・リーは何者かと問いたげな視線をヒトミに投げかけると、その拳が
拳サポーターで覆われていることを確認した。
 どうやらこの少女が対戦相手らしい。ジャン・リーはそう認識すると「来い」
と無愛想に呟くと構えをとった。
「お願いします!」
 ジャン・リーが構え終えるとヒトミは一言、挨拶をしてから構える。
 二人の戦いの火蓋は静かに切って落とされた。

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GateKeeper

 とある高級クラブの前で一組の男女が口論をしていた。
 男の服装はニット帽を被りその下から伸び放題の脱色した髪の毛があちこちに跳
ねている。上半身はTシャツの上からパーカーを羽織り、腰から下はカーゴパンツ
にワークブーツと言った出で立ちで、明らかにこの店には似つかわしくない。
「当店は会員制となっておりますので、初めての方は当店オーナーからの招待状が
必要となります」
 冷静に、しかし無機質にも感情的にもならず戸口に立つ黒のベストとスラックス
姿の女が男を応対する。ねじり上げた後ろ髪を飾り気のない、それでいて野暮には
ならない程度の髪留めで留めた髪型とパンツルックが相まって仕事をそつなくこな
す女と言った印象である。
 また、常連客の中にはこの店のホストガールよりも彼女に接客して欲しいと言う
声も少なくないほど、整った顔立ちをしていた。しかし、彼女はそんな声に流され
ず常にこの店の戸口に立ち受付嬢を続けている。

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拳闘勇姫

 多くの観衆が集い津波のような歓声が響き渡る円形闘技場。
 その中心部に筋骨隆々の男が立っている。男は無敵と謳われた拳闘士。その鍛え上げら
れた肉体には入れ墨が彫り込まれていた。
 拳闘士の視線はせり上がってくる昇降機に乗った挑戦者へと注がれている。
 昇降機の上には足許まで覆われたローブ姿の挑戦者の姿がある。フードを目深にかぶり
その顔までうかがい知ることは出来ない。一つだけ言えるのは拳闘士よりも小柄な体格で
あると言う事実だけであった。
 昇降機が止まると歓声は更に大きくなる。挑戦者はその声に応えるようにローブを脱ぎ
捨てた。
 拳闘士の前に姿を表わしたのは金髪碧眼の勝ち気な眼差しが印象的な美女だった。
 彼女の名はカサンドラ・アレクサンドル――神の加護を得られた者のみが体得できると
言われる聖アテナ流の女剣士である。だが、剣を帯びている様子はない。
 無論、拳闘士もその勇名は耳にしていた。しかし、剣士であるカサンドラが何故、この
場にいるのか、何故、武具を持っていないのか理解に苦しむと言う風情で佇んでいる。
「あら、私が相手だとは聞いてなかったみたいね」
 拳闘士の表情を見るなりカサンドラは可笑しくて堪らないといった口調で告げる。
「貴様の勇名は聞いている……だが、俺と拳で闘おうというのか?」
 拳闘士の問いかけに対しカサンドラは拳を閃かせた。白い手袋に覆われた拳が閃光のよ
うに疾り拳闘士の眼前で止まる。
「面白い……この勝負、受けて立とう」
 カサンドラの鋭い拳の前に拳闘士は歯を剥き出し笑みを浮かべた。それは獲物を見付け
た肉食獣を思わせる表情であった。

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