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女教師、夜のレッスン その2

 ある有名体育大学に推薦で俺は合格した。勿論、あの女教師のお陰だ。
 今まで、俺は先生とのスパーばかりに触れてきたが筋力や体力トレーニング
の内容も先生が全て組んでくれている。
 先生は俺ほどの逸材は見たことがないと言っていたが、俺は未だに先生に拳
を触れることも出来ずに居る。素直には喜べない褒め言葉だ。
 更には妙な噂まで付きまとい始めている。俺が先生と付き合っていると言う
噂だ。個人的なボクシング指導、しかも、KOのオマケ付きスパーまで在るの
が、お付き合いというのであれば、俺は性的倒錯者と言うやつだ。頭が痛い。
「何を悩んでるのかしら、少年」
 背後から俺を悩ませている当の本人の声がする。振り返った俺は顔が熱くなっ
ていくのを感じた。先生の声が妙に艶っぽかったからだ。
 そんな、俺を悪戯っぽい笑みを浮かべたまま見つめる先生。周りの生徒達が
ヒソヒソと声を交わしながら通り過ぎていく。
「今夜、付き合いなさい」
 周りの視線に気づいたのか先生はわざと俺の耳元にで艶かしい声でそう囁い
てから立ち去る。女子生徒の黄色い声が鼓膜に男子生徒の嫉妬の視線が全身に
突き刺さる。誤解はますます深まるばかり。
 しかし、俺は今夜の事を思うと身が引き締まっていった。

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受け継がれる思い

 某テレビ局の放送スタジオ。そこにはオクタゴンが組み上げられていた。
 元アスリート、或いは趣味でスポーツをやっていると言うには熱が入った男
性芸能人が現役プロ女子アスリートに挑戦するという企画が売りの番組の為で
ある。
 オクタゴンの中では一人の若手人気俳優がウォームアップを行なっていた。
 彼の名は本間勇吾。年齢22歳。若手刑事やスポーツ部に所属するヤンチャ
な少年と言った役で人気の俳優。
 ヘッドギア越しに覗くのは精悍な顔立ち。肩幅が広く無駄なく鍛えられた肉
体。その身長172センチ、体重55キロ、体脂肪も10%前後と言う数値は
プロアスリートと言っても通じるものである。
 今回の女子プロ総合格闘家新人王へ挑戦すると言う企画に起用されたのは忙
しいスケジュールの合間にジムに通いアマ全国大会で優勝を果たしていたから
だ。その実力からプロデビューも噂されているが本人にその気はない。
 プロの格闘家とは言えそれだけで食べて行けるものは一握りで、別に職業を
持っている者が殆どだ。
 芸能活動が軌道に乗った以上はそこまでして続ける熱意は勇吾にはない。そ
もそも、趣味で始め周りに勧められるがままに大会に出場し好成績を収めてき
ただけの代物。
 だが、その実力を持ち上げられることには悪い気はしてなかった。今回のオ
ファーを受けたのも、その実力を持ってすればプロ新人王とは言え女子相手な
らそこそこ、闘える自信があったからだ。
 この試合が終われば互いの健闘を讃え合う姿を多くの人に見せることで、人
気取りに利用できるかもしれない。そんな打算も勇吾にはあった。

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お年玉

 俺はオクタゴンの中で対戦相手を待っていた。相手は女子総合格闘家、いわ
ゆるエキシビジョンマッチと言うやつだ。
 やがて花道をミニ和服に身を包んだ女が歩いてくる。その顔は紛れもなく対
戦相手の女。元空手王者、元プロレスラーの肩書きを持つ女。
 本来、真剣勝負向きの性格なのか総合格闘技に転向してからは負け知らずを
誇っているそうだが、流石に階級が上のしかも男の俺を相手にしようとは無謀
過ぎる。俺はそれを思い知らせるために試合を受けた。
 ついに女がオクタゴンへの入り込んできた。だが、様子がおかしい。女はガ
ウン代わりと俺が思っていたミニ和服を着たままシャドウを始めた。
 ふざけてるにも程がある…俺はそう思いマウスピースを食い千切れるのでは
ないかと思うほどに歯をかみしめ、グローブの保護されていない手のひらに指
が食い込みそうなほど拳を握り締め、睨みつける。
「松の内だし、折角だから華やかに行かせてもらうわ」
 俺の視線に気づいたのか女はシャドウをやめると歩み寄って来た。
 それから暫く睨み合いの後、試合開始のブザーが鳴り響いた。俺は身構える
と一旦、間合いを取る。対する女は間合いを測る俺に常に正対する様に身構え
続ける。

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女教師、聖夜のレッスン

 今日も俺は女教師からレッスンの呼び出しを受けた。
 未だ、俺の拳は先生の身体をかすることも出来ずダウンさせられるだけのレッ
スン…
 しかし、皮肉な事にそのレッスンは俺のディフェンステクニックの向上に繋がっ
ていた。先生のハンドスピードは閃光と形容が相応しいほどに早い。
 それをガードや回避しようという試みは成功した回数を指折りで数えられるほど
だが、先生のパンチに反応しようと試みた努力は無駄ではなかった。
 同世代の選手のパンチなら大概、防ぐことが出来るのである。
「私に負けた悔しさをバネによく成長したわね」
と先生は励ましてくれるが俺の心中は複雑だ。強豪校の選手やプロデビューできる
と噂される選手よりも遥か高い次元に存在する女教師。
 俺は先生をボクシングの神様が女教師の姿で降臨したと納得しようとしてきたが
それも上手くいっているとは言い難い。その反面、先生ほどの強さのボクサーの胸
を借りることが出来るのは幸運と言う程度の言葉では済まされない。
 そして、その女教師から聖夜のお誘い。これがデートならば高校生の俺にとって
は過ぎたものだが、いつもの様に誰もいないジムでの実戦スパーリング。
 ただでさえ先生には複雑な思いが更に深まっていく。
 ここ暫くは先生も俺のディフェンスの向上を認めたのか
「ちょっと本気を出すわよ、危ないからヘッドギアとカップをつけなさい」
と防具の装着を義務付けていた。
 俺はジムに着くと早速、着替え防具も身につけリングに上がる。そこへ現れたの
はどこで仕入れたのか頭を悩ますサンタ衣装に身を包んだ先生だった。
 無論、その手にはグローブがはめられている。
「今日は頑張るキミに特別レッスンよ」
 そう言うと先生はファイティングポーズを取った。その構えに一分の隙も認めら
れず先生から沸き立つオーラが俺の背筋に冷たい刃を突き刺す。
 セクシーサンタが殺気を剥き出しで自分と対峙すると言う奇妙なシチュエーショ
ン…しかし、俺は闘志を奮い立たせこのレッスンへと臨んだ。
 そして、結果は惨敗。
 パンチと叱咤のプレゼントをたっぷりと貰い脳を揺さぶられ、内蔵を抉られ立っ
ているのがやっとという状況。
 だが、俺は先生の「本気」と言うプレゼントに応えたいが一心で拳を振るう。
 正面に立っていたはずの先生は一瞬でその姿を消し、俺の左脇に先生の右拳が
力の限り抉り込まれる。
 その威力に俺は堪らず大量の唾液をまとわりつかせたマウスピースを勢い良く
吐き出した。
 先生が何か言っていたようだがその声は俺の耳には届かず内蔵が口からはみ出
しそうな激痛の中、リングへとうずくまっていった。

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ドリーム・ファイト・クラブ2

 俺はパンチを躱され続けて肩で息をしていた。
 ムキになりパンチを振り回した続けたせいでダメージを受けたわけでもない
のに足を前に踏み出すことも出来ず腕は構えるのがやっとと言う程に疲労が蓄
積している。
「それじゃあ、身体も温まったので行きますよ~」
 対戦相手、双葉理保が頬を上気させながらそう宣言するとローファーパンプ
スを鳴らしながら一気に踏み込んでくる。その足音に俺は自分を散々、翻弄し
続けた理保のフットワークが脳裏をよぎった。
「ラブ・アッパー!」
 理保は楽しそうに声を上げながら大きく腕を振りかぶる。それがわざとだと
言う事は真剣に闘う理保の姿を知っている俺には理解できた。
 不意に周りの音が聞こえなくなり視界が色を失う。そして理保の動きが緩慢
に見え始める。
 人間は危機的な状況になると一部の情報を遮断し一番大きな危険を回避しよ
うとする。モノクロームのスローモーションでまっすぐ俺に迫り来る理保の拳
を見つめながらそんな話を思い起こした。
 だが、そんなでも俺の身体は動こうとはしなかった。いや、動けなかった。
 激しい衝撃とともに俺の視界が色を取り戻す。次いで途切れることのない打
撃音と同時に視界と脳が右に左に揺さぶられる。
 ヘッドギア越しですら意識を刈り取ろうとする理保のフックの連打。その速
さに俺は倒れることも許されず為す術なく打たれ続けた。そして、構えていた
腕が力なくだらりと垂れ下がる。
 そこで理保の乱打は一旦、停止した。前のめりに崩れ落ちようとする俺。そ
の顎を理保は拳を一気に振り上げ打ちぬいた。
 ぐんぐんと近づいて来る天井。その事実に理保は倍以上も体重がある俺をアッ
パーでロケットのように打ち上げたのだと悟った。

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あなたのハートをノックアウト

 俺は真に負けてから今まで以上にトレーニングに明け暮れていた。勿論、真
と再戦するために。そこへ試合の申し込みがきた。対戦相手の名は三浦あずさ。
真と同じプロダクションの所属。ふと、俺は拓海の所属も気になり調べてみる
と彼女も真と同じプロダクションの所属。
 俺は拓海と真との闘いを思い出した。俺は拓海を真の様に全てを認めるつも
りはまだ無い。だが、その強さは認めざるを得ない。つまり、あずさも強敵だ
と判断に値する。俺はそう考えトレーニングを進めることにした。
 ロードワーク中、偶然にもあずさと会う機会に恵まれた俺は少しだけ彼女と
話してみた。格闘技とは縁の無さそうなおっとりとした性格。それが俺の印象
だった。
 しかし、リング上で再びまみえたあずさは別人の様に感じた。穏やかではあ
るが自身に満ち溢れた表情。その姿に背筋が凍りそうになる。
 あずさのファイトスタイルはリングの外で会った時に感じた性格とは正反対
だった。次々と重いパンチを繰り出しながら圧力をかけてくる。勿論、そのパ
ンチもただ振り回すのではなく、しっかりと俺のガードを揺さぶり生まれた綻
びを突いてくる。
 下手に逃げようとすればその圧力でコーナーへと追い詰められてしまう。反
撃するにはあずさのハンドスピードは俺が対抗できるかと言えば間違いなく俺
がカウンターを食らう。しかし、ガードを固めているわけにも行かない。そし
て、俺は敢えて打ち合いに応じる事を選んだ。
 予想通りあずさの重く硬い拳がカウンターで俺を捉える。一瞬、意識が飛び
かける俺。そして、その一瞬が俺にとって命取りになった。
 俺が回復する前に次のあずさの重い一撃が襲いかかってくる。その衝撃で俺
の神経は再び麻痺を起こし、その間にまたあずさの拳が叩き込まれる。
 あずさのパンチは爆撃とも言える破壊力を以って俺のスタミナを奪っていっ
た。俺はあずさの絨毯爆撃の様なラッシュに耐えながら止めの一撃を待った。
狙うはカウンター。
 もう一発しかパンチを打てない。そこまで俺が追い詰められた時、機会は訪
れた。止めと言わんばかりに大きく拳が振りかぶられる。俺はそれに合わせて
左のストレートを放った。
 だが、それをあずさは僅かに首を傾けただけでそれを外す。代わりにあずさ
の右ストレートが俺の胸に捩じ込まれた。
 心臓を狙い相手の動きを止めるハートブレイクショット。その威力は俺の胸
骨が軋みを上げるほどのものだった。
「お疲れ様でした」
 あずさは自分の拳に伝わった手応えに俺が持たないと確信する不意に背を向
けた。そして、俺はあずさの確信通り膝から下の支えが無くなったかのように
崩れ落ちる。全身から力が抜け全く力が入らない。意識はあるが身体の自由が
全然効かない。
「あなたのハートをノックアウト…ですね」
 俺が崩れ落ちるのを感じ取りそう宣言するあずさ。俺は素直にあずさとの闘
いに負けた事を認めていた。

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銀河最強の拳

 またボディで浮かされた……腹筋を貫き背中拳がから飛び出したのではない
かと錯覚するほどの衝撃が俺の内蔵を押しつぶす。
 今回の対戦相手もアイドルと聞いた時は冗談じゃないと真剣に思った。確か
にこの前の試合でアイドル相手に負けたことは認めるが俺は噛ませ犬ではない
と憤った。
 しかし、対戦相手の名を聞いて俺は考えを改めた。その名は菊地真。800
戦無敗のステゴロ・ザウラーのどんな攻撃も強靭な肉体で受け止めるというデ
モンストレーションをたった一撃で粉砕した少女だ。その後、ザウラーが担架
で運ばれる姿をこの目で見た俺は演技などでは無いと直感した。
 あまりの強さに銀河最強等と気恥ずかしくて名乗れない称号を与えられた彼
を一撃で仕留めた真の拳は銀河最強の拳と言って過言ではない。
 そんな真の格闘家としての才能を俺は計り知れないものと感じ取り、彼女が
格闘技をするならばそれは他の女とは違い本物と認めて良いとすら思っている。
 俺はそのつもりで調整を進めた。
「ボディがガラ空きですよ!」
 せめて一矢報いたい。そんな思いで俺が放った右フックは当然の様にと空を
切る。しっかりと狙いを定め放ったはずの拳を真が躱す気配もなかったのに何
もない空間を打つ。それはこの試合でずっと感じていたことだった。
 そこへ俺を浮かせた真の左のボディ・アッパー。衝撃の後に言い放たれた真
の言葉と共に今度は実態を持った拳が俺の腹筋に埋没し内蔵を噛み砕いていく。
 遂に放たれたザウラーを沈めた拳をその身で噛み締める俺。しかし、それだ
けの一撃を放つ素振りを真は見せなかった。それは放たれたと言うより置いて
あったと表現した方が正しいほどに。勿論、その感覚はこの一撃に限らなかっ
た。試合開始から今まで感じ続けていた事だ。
 今まで蓄積していたダメージに加えザウラーすら一撃で沈める真の拳に耐え
かねた俺は膝をつき身体を折り曲げる。その途上、一瞬だが真の表情が目に飛
び込んでくる。俺はこの状況でもその笑顔が眩しいと真剣に思った。
 スローモーションの様にマットが近づいてくる中、俺は真がこの試合中、い
や、リングに上がってから笑顔を絶やさずにいたのを思い返した。その笑顔は
俺を嘲るわけでもなく侮っているわけでもない。
 持てる技倆を全て発揮し勝敗に拘らず競い合う事が楽しくて、嬉しくてしょ
うが無いと言う純粋な笑顔。
 すぐそばに立っているはずなのに遠くから聞こえるかのような真の勝利宣言
と再戦を希望する声。その声からも笑顔と同様のものを感じた。そして、俺は
真の強さがどこから生まれてきたのか悟った。
 俺達は勝った負けた以外の事は考えない。相手を倒すことが強さの証明だと
信じている。しかし、真からはそんな気持ちを欠片も感じない。勝敗への無欲
さ故にたどり着いた境地。悟りの様なものだ。
 俺達の強さが大海を横断しようと競う合う小舟ならば真の強さは大海そのも
の。だが、大海は荒れ狂い、時に小舟を呑み込んでしまう。それでもきらめく
海原と広がる青空、照りつける太陽は美しい。
 俺は何も手出しができずに真に負けたのに完全に魅せられていた。荒れ狂う
波が真の拳ならば、それを乗り越える日が来るのか分からない。俺には真の様
に悟れないからだ。
 それでも俺は遠のく意識の中で再戦を堅く決意した。真の闘う姿は俺には美
しく魅力的だからだ。その美しさは鑑賞するものではなく肌で感じるものだと
俺は揺るぎない確信を持っていた。

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